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ねぇTom、「構造を読み解く力」って聞いたことある?最近SNSでも話題になってるのよ。

あー、なんとなくは。でも「読解力」と何が違うの?って思っちゃうな。文章を読むのって、国語の授業だけの話だと思ってた。

私もそう思ってたの。でもね、実は大人になってからのほうが、必要になる場面が多いんだって。会議の議事録とか、資料の読み取りとか、仕事の中でかなり使ってるのよ。

確かに……報告書とかプレゼンとか、うまく伝えられてる人って、何か「伝え方」に共通点があるよね。それって「構造」的に考えてるってこと?
「読解力が低下している」といった話題は、PISA(学習到達度調査)などの国際比較テストでもたびたび耳にします。しかし、読解力とは本来、単なる文章の理解にとどまらず、「相手の意図をくみ取り、自分の思考を構造的に組み立てて、伝える力」でもあります。
本書で語られるのは、戦後に小学校教育として始まった「構造学習」という手法。この教育法は、文章を「構造的に」読み解くことで、思考力を育てるというものです。そして、著者はこのスキルこそが、自身のキャリアや学び、さらにはビジネスシーンでの実践において大きな力になったと語っています。
読み手のニーズを汲み取り、論点を明確に伝える力。曖昧な会話から本質をつかむ力。何気ない資料や会話の裏にある構造をつかむ力。それらすべてが「構造を読み解く力」なのです。
このスキルは、子どもだけでなく、大人にとってこそ必要な“生きる力”なのではないでしょうか。本記事では、読解力を構造的に鍛えるための具体的な知見とその実践法を紹介していきます。
読解力は国語の教科にとどまらず、すべての科目、そしてビジネスや日常会話にも活きる基礎スキルです。文章だけでなく、会話や情報、感情の背後にある「意図」や「構造」をつかむ力が求められています。
文章の主張と根拠、段落の意味、事例の役割を明確にすることで、理解が深まり、アウトプットの質も飛躍的に上がります。構造を意識することで、論理的思考力や問題解決力も自然に鍛えられます。
構造的読解は、訓練を通じていくつになっても身につけられるスキルです。新聞や雑誌、小説、会議メモなど、身近な素材を使って“読み解く習慣”を持つことが大切なのです。

著者 | 河村 有希絵 |
出版社 | ディスカヴァー・トゥエンティワン |
出版日 | 2023年3月25日 |
ジャンル | 勉強法・学習法 |
読解力は、単に文章を正確に理解する力ではなく、話し手や書き手の「意図」や「背景」をつかみ取るための思考の基本です。この力は、国語の授業に限らず、理科の実験レポートを読むときにも、社会の資料から主張を読み取るときにも必要です。たとえば、プレゼン資料の構成を理解したり、ニュースの真意を見抜いたりするにも読解力は不可欠です。
著者が示すように、読解力の本質は「構造の把握」にあります。誰が何を伝えようとしているのか、どの段落が根拠で、どこに主張があるのか、それを瞬時に掴むことで理解の精度が上がります。そしてこれは、会話にも応用できます。相手がなぜその質問をしたのか、どういう立場から話しているのかを汲み取ることで、返答の質が高まるのです。
また、読解力がある人は、情報を受け取ると同時に「これはどんな構造の文章か?」という視点で整理し始めます。読み解いた情報を自分の知識として体系化できるので、吸収力にも差が出ます。著者はこれを「国語を超える力」と表現しています。つまり、言葉の技術ではなく、「思考そのものの技術」なのです。
このように、読解力は「国語の成績を上げるため」だけではなく、「知的活動すべての基礎訓練」として位置づけられるべきスキルなのです。
構造を意識して読むことは、文章の中にある「設計図」を可視化することに他なりません。著者は、「段落には重みがある」と説きます。つまり、どの段落が主張を担い、どこが補足・根拠・具体例なのかを明確にすることで、文章の全体像が一気に浮かび上がるのです。
これにより、曖昧な理解ではなく、「納得できる理解」に変わります。読者として情報を受け取るだけでなく、筆者の思考の流れまで追えるようになります。たとえば新聞社説やビジネス文書を読むとき、単に内容を知るだけでなく「どう構成されているか」が分かれば、読み返さなくても理解できます。
さらにこれは、アウトプットにも直結します。自分が話すとき、書くときに、「どの順番で伝えれば一番効果的か」「どの情報を根拠に使えば説得力が増すか」を考える癖がつくのです。著者は、コンサル時代のプレゼン作成でこの構造的な思考が何度も役立ったと語っています。
また、ビジネスシーンで求められる「ロジカルシンキング」や「クリティカルシンキング」も、この構造把握の力から派生します。実際、構造を読み解く力は、フレームワークやロジックツリーに依存せずとも鍛えられるのです。感覚的に「これは演繹法だな」「この段落は帰納法だな」と掴めるようになると、情報処理も早くなります。
つまり、構造読解は読者としての理解力を高めるだけでなく、話す・書く・伝えるというすべての表現活動を支える「頭の使い方」を整える訓練となるのです。
読解力というと、「子どもの頃に身につけるもの」という先入観を持っている人は多いかもしれません。確かに、子ども時代に学んだことは可塑性が高く、習得も早いです。しかし、著者は「メタ認知」を持つ大人こそ、読解力を意識的に伸ばすことができると語っています。
メタ認知とは、自分の思考を客観的に見つめる力です。たとえば、「自分は話の全体像を捉えるのが苦手だな」と気づけば、それを補うための読み方を自分で探すことができます。著者自身も、教育学部への再入学を経て「構造読解力」を理論的に再構築しています。
また、読解力を鍛える教材は、身の回りにいくらでもあります。新聞の社説、ビジネス雑誌の記事、短編小説やエッセイなど、段落構成がある文章を読み、「この段落は主張」「ここは根拠」とチャート化することで構造が見えてきます。
さらに、大人ならではの実践の場も豊富です。会議の議事録作成、上司への報告書、部下への伝達メール、これらすべてが「構造化されたアウトプット」の訓練になります。著者はコンサルタント時代、インタビューメモのまとめ方で高評価を得た経験から、時系列ではなく「要点から書く」技術が効果的だったと述べています。
このように、読解力は「国語力」ではなく、「仕事力」や「思考力」として日常的に使われるべきものであり、大人の努力によって十分に伸ばすことが可能です。重要なのは、「読解力はスキルである」と認識し、繰り返し訓練を重ねる姿勢です。
まずは「読む」ことに意識を向ける習慣をつけましょう。新聞の社説やビジネスメール、ニュース記事を読む際、ただ流し読みするのではなく、「筆者が一番言いたいことは何か?」「それを支える根拠は?」「この段落の役割は何か?」と問いかけながら読みます。特に新聞の社説は、段落が整理されており、論理展開も明確なので、訓練には最適です。
文章を読んだら、構造チャート(論点→根拠→例)を紙に描いてみましょう。最初は短めの文章から始めて、段落ごとの役割を矢印や記号でつなげていきます。例えば、主張は○、根拠は→、具体例は※など記号を使って視覚化することで、文章の構造が自然と頭に入ります。これは、読書メモや議事録作成の質を上げることにもつながります。
会議で発言する際、または誰かに報告する場面では、「結論→理由→具体例」の順で話すよう心がけましょう。また、メールや報告書では「まず要点、次に詳細」という構成を徹底してみてください。もし可能であれば、資料作成やプレゼンでもスライド1枚に1メッセージを載せる「ワンスライド・ワンメッセージ」ルールを導入すると、伝える力が飛躍的に向上します。
本書は、読解力を基盤とした思考力向上を目指しており、ビジネスや教育の現場で非常に役立つ内容です。特に、文章の構造を意識した読解法やプレゼン・資料作成への応用など、具体的な活用シーンが豊富に語られています。ただし、汎用的なスキルに落とし込む手前の抽象性が高く、即実践に移しにくい部分も一部あります。
内容自体は豊富な事例と著者の体験談を通じて説明されており、親しみやすくはあります。しかし、文体がやや冗長で、論点が明確に整理されていない場面があり、論旨の追跡に読者の根気が必要です。また、「構造学習」や「構造読解力」の説明がやや複雑で、初学者には負荷が高い箇所があります。
大人から子どもまで使えると謳われており、テーマも「読解」という普遍的な力を扱っています。ただし、内容の多くが「国語教育」「構造学習」という特定文脈に依存しており、他分野への適用可能性についての言及は控えめです。読解を媒介とした思考法の普遍性を強調しているわりに、具体的に応用するための道筋は限定的です。
語り口は個人的で柔らかく、親しみやすさはある一方、段落が長く話題の転換も緩やかなため、論理展開が曖昧に感じられる部分があります。特に理論的説明と体験談が混在する箇所では、読者がどこに注目すべきか迷いやすく、読書に集中しにくくなる印象があります。
教育理論「構造学習」の背景や、思考法としての「構造読解力」の構成、さらにはその訓練法までを網羅しており、理論的な裏付けは十分です。実践例や学術的文脈にも言及しており、教育分野では高い専門性が感じられます。ただし、教育以外の領域ではやや断片的な説明にとどまっており、分野横断的な深堀りは限定的です。

文章の構造をつかむって、ただ読んで終わりじゃなくて、相手の意図を理解する訓練になるんだね。

しかもそれ、大人になってからでも鍛えられるっていうのが嬉しいよね。俺、今さら無理かなと思ってたからさ。

新聞の社説をチャートにまとめるとか、ちょっとした工夫で変わるって書いてあったし。

確かに、プレゼンとか資料作りの時に「構造的に伝える」意識を持つだけで説得力上がるもんなあ。
文章を「読む力」は、単に内容を理解するだけではなく、相手の思考や意図、背景にまで目を向ける“人間力”とも言えます。構造を読み解くことで、論理的に理解し、的確に伝え、相手と円滑に協働することができるようになります。それは子どもに限らず、大人にも必須のスキルです。
本書は、かつて国語の授業で受けた「構造学習」というアプローチを、現代に通用する読解法として再構築し、誰でも実践できる形で紹介しています。読解に自信がない方、文章を読むのが苦手な方にこそ、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。読解はスキル。今からでも、何歳からでも、鍛えられます。