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最近ニュース見てると、日本の外交ってなんかフラフラしてない?アメリカに寄ったかと思えば中国に配慮したり…

うん、たしかに一貫性がないように見えるよね。でもそれって何か理由があるのかな?

この前読んだ『外交戦』って本で、その辺がすごく分かりやすく書いてあったよ。世界の外交って感情じゃなくて「論理」で動いてるんだって。

へえ、ちょっと気になるな。それって日本の迷走の理由もわかるってこと?
『外交戦』は、経済学者・高橋洋一氏が日本外交の課題を冷静かつ論理的に分析した一冊です。感情論ではなく、数字と理屈で国際社会の現実を読み解き、なぜ日本の外交が世界の中でうまく立ち回れないのか、その本質に迫ります。地政学、安全保障、貿易、そして中国や北朝鮮との関係といった複雑なテーマを、驚くほど明快に解説しています。
世界は「自由主義」や「人権」ではなく、国家の利害と論理で動いています。表面的な正義感に流されず、本質を見抜く目が外交には必要です。
日本は国内世論やメディアの影響を強く受けやすく、感情的な判断に偏りがちです。その結果、戦略的な一貫性を持つことが難しくなっています。
感情でなく「損得勘定」で対話と制裁を使い分けるべきです。相手の論理を理解し、したたかに対応することが求められています。

著者 | 高橋 洋一 |
出版社 | あさ出版 |
出版日 | 2019年12月12日 |
ジャンル | 政治・経済 |
国際社会における外交は、私たちが学校で習ったような「正義」や「道徳」といった価値観では動いていません。表向きには「自由」「人権」「平和」などの理念が掲げられていますが、各国が実際に外交を行うときには、常に「自国にとって得か損か」という現実的な基準で動いています。
たとえばアメリカが世界各地に軍を展開しているのは、民主主義を広めるためではなく、自国の安全保障と経済的利益を守るためです。自由貿易を推進するのも、自国の産業がそれによって得をするという確信があるからです。
このような現実を理解しなければ、日本は理想論ばかりを掲げて空回りすることになります。中国が一帯一路を進めているのも、単なる支援ではなく、自国のインフラ企業に仕事を与え、影響力を拡大するという明確な利益追求の行動です。
つまり、外交の舞台では「善人」ではなく「賢人」が評価されるのです。高橋洋一氏は、本書で一貫して「外交は取引だ」と説いており、感情を排して論理で判断することの重要性を何度も強調しています。
日本が外交で主導権を握るには、この「損得の視点」を持つことが欠かせません。理想と現実を切り分け、相手国がなぜその行動を取ったのかを損得で分析する力が必要です。また、日本自身も「国益」を第一に考え、交渉のテーブルでは冷静に譲歩と圧力を使い分けるしたたかさが求められます。
国民もまた、「正義」を追い求めるだけでなく、「現実に何を得るか」という視点を共有するべきです。外交は道徳ではなく戦略の場であり、その論理を知ることで初めて国際社会における自国の立ち位置が明確になります。
日本の外交が一貫性を欠く最大の理由は、外交判断に対して国民感情やマスコミ報道が大きな影響力を持っていることです。
例えば、北朝鮮によるミサイル発射があると、「強く抗議すべきだ」「国交断絶だ」という感情的な声がメディアやSNSに溢れます。その一方で、中国に関する問題が起これば「経済関係を考慮して配慮を」といった意見が出て、政府はその間で揺れ動かざるを得ません。このように、世論が場当たり的であることが、日本の外交におけるブレを生んでいるのです。
また、日本の政治家も選挙を意識して感情的なアピールを優先しがちです。中長期的な国益よりも、目先の支持率やメディアの批判回避を優先する結果、持続可能な外交戦略が構築されません。高橋氏はこれを「ポピュリズム外交」と呼び、感情的な空気に振り回される日本の構造的弱点と分析しています。
本来、外交とは長期的視点で国益を最大化するための戦略であり、短期的な感情に流されるものではありません。しかし、日本では「空気に支配される文化」がその妨げとなっているのです。そのため、同盟国であるアメリカとの関係もぶれやすく、中国や韓国に対しても一貫した態度が取れず、信頼を失うことになります。国際社会では、「昨日と言っていることが違う国」とは取引を避けられる傾向があるため、これは致命的な問題です。
感情を刺激する報道や世論の声に、政治家や官僚がすぐ反応してしまう環境こそが、日本の外交の迷走を招いているのです。感情ではなく、戦略とデータに基づいて一貫性のある外交を築くためには、国民一人ひとりが「外交は冷静なゲームである」という認識を持つ必要があります。
日本は歴史的な背景やメディアの論調から、中国や北朝鮮に対して「許せない」「仲良くすべきだ」など、どうしても感情的な対応をしてしまいがちです。しかし、『外交戦』では明確に、「外交は感情の問題ではなく、利害と交渉の問題だ」と説かれています。つまり、中国や北朝鮮との関係も、「好悪」ではなく、「この国とどう向き合えば日本の国益が最大化するか」を軸に考えるべきなのです。
たとえば、中国との関係では、経済的に大きな依存関係があります。製造業や観光、輸出入などさまざまな分野で中国と深く関わっているため、単に敵視して断絶することは現実的ではありません。一方で、安全保障や領土問題においては、毅然とした態度を取らなければなりません。このように、「協力する部分」と「対立する部分」を切り分けて対応する「ツートラック外交」が必要とされているのです。
北朝鮮についても同様で、拉致問題や核問題などの重大課題がありますが、感情的に「すぐ制裁だ」「対話拒否だ」と決めるのではなく、相手の動機を読み取り、交渉のカードを戦略的に使い分ける必要があります。挑発行為には毅然と対応しつつ、対話の窓口は閉ざさず、常に主導権を握る姿勢が大切です。
高橋氏は、日本が中国や北朝鮮に過度に「誠意」や「謝罪」を期待したり、逆に「怒り」や「強硬策」に偏ることが、外交的失敗を生んでいると指摘しています。これらの国々も日本と同様、自国の損得を軸に行動しており、そこに情はありません。だからこそ、日本もまた「相手の論理に即して対応する」冷静さと計算が必要なのです。
最終的に、日本が地域の安定と国益を守るためには、これらの隣国に対して「好きか嫌いか」ではなく、「どう使うか」という視点が不可欠です。友好も敵対も、その時々の国益に応じて柔軟に変えるべきであり、それこそが真の外交力と言えるでしょう。
ニュースや国際問題を見るときに、感情的な判断を避け、「この国はなぜこう動いたのか?」と損得で分析してみましょう。たとえばアメリカが関税をかけた理由、中国がある地域で影響力を拡大している意図などを、自国の利害から読み解く訓練が有効です。SNSの意見に流されず、データや専門家の分析を参考にする姿勢を持つことが重要です。
政府や政治家の外交方針を表面的な発言ではなく、その裏にある意図や戦略から理解するように意識しましょう。国会答弁や記者会見を見たときに、「この発言は誰へのメッセージか?」「この時期にこの提案を出した理由は何か?」といった視点で読み取る力を鍛えると、情報の見方が一気に深まります。
中国や北朝鮮に関する報道が感情的になりやすい中で、あえて一歩引いて冷静に見直すことが大切です。たとえば挑発行為に対して「日本はどう動くべきか」ではなく、「相手の意図は何か」「どんな利益を得ようとしているのか」を考えてみましょう。外交はゲームであり、勝ち負けよりもバランスを取ることが重要であるという視点を持つことが有効です。
国際関係や外交について、経済や安全保障の視点から実用的に考えるフレームワークを提供しています。特に「原理原則」や「自由貿易は国益にかなう」といった定義が、現実のニュース理解やビジネスにも応用可能です。ただし、実践的な政策提言や手法にまでは踏み込んでおらず、読者が能動的に思考を進める必要があります。
「外交は合コンのようなもの」といった比喩や、貿易赤字をデパートの買い物に例える手法などで、抽象的なテーマを身近に感じさせる工夫があります。一方で、後半になると論旨が冗長に感じる部分もあり、全体としてはやや詰め込みすぎの印象があります。
内容は国際政治や経済に関心のある読者にとっては幅広く応用可能ですが、取り上げている事例が特定の時期・地域(例:日韓関係やTPP)に偏っているため、時代や地域が変わると使いにくい部分もあります。また、主張が強いために普遍性がやや損なわれている面も見られます。
論理構成は明確で、テンポよく話が進みますが、文体がやや攻撃的で独善的な口調に感じる箇所が散見され、好みが分かれるところです。比喩やたとえ話も多用されているものの、それがやや過剰に感じられる読者もいるかもしれません。
プリンストン大学で国際政治を学んだ著者による内容は、理論(地政学、民主的平和論、最適通貨圏理論など)にもとづいており、一定の専門性を有しています。ただし、学術的な厳密性よりも実務感覚や意見が優先されているため、学術書的な専門性を期待する読者にはやや物足りない部分もあります。

こうしてまとめてみると、外交ってすごく「冷静な計算の世界」なんだね。

ほんとだね。感情で動いたら損するのは自分ってことか…。

逆に言えば、論理で考えれば日本にもチャンスはあるってこと。感情を排して、ちゃんと考えようって本だったよ。

ニュースの見方も変わりそう。ありがとう、教えてくれて!
『外交戦』は、複雑でわかりづらい国際情勢を、明快かつ論理的に解説してくれる一冊です。日本が迷走しないためには、「感情」ではなく「戦略」で動くことが求められます。感情的な議論が溢れる現代だからこそ、一度立ち止まり、数字と論理で世界を見る視点を持ちませんか?