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ねえTom、最近「地政学」って言葉よく聞かない?ニュースでも米中対立とか日本の安全保障の話題で出てくるし。

うん、たしかに。でも正直「地政学」って何か難しそうで、ちゃんと理解できてないかも。

私もそう思ってたけど、最近読んだ本で、日本の立場から見た地政学の考え方がすごくわかりやすくて。まさに今の世界情勢と日本の関係がすっきりしたのよ。

それ気になるなぁ。日本は中国やアメリカとの関係もあるし、地理的にも大事な位置にいるしね。その本、どんなことが書いてあったの?
世界が再び「地政学」の時代に突入した今、日本の安全と繁栄を考えるうえで地理的条件と国家戦略を理解することは欠かせません。本記事では、『日本の地政学』という書籍をもとに、米中対立が進む中で日本がどのような選択をすべきかを読み解いていきます。
地政学とは、地理的な条件をふまえて国家の戦略や外交を考える学問です。特に日本のような島国では、地理的制約と可能性を理解することが生存戦略に直結します。
アメリカと中国の覇権争いが続くなか、日本は経済的にも軍事的にもその影響を大きく受ける立場にあります。どちらに寄るかだけでなく、自主的な選択肢を持つことが重要とされています。
日本は自国の特性を生かしながら、安全保障と経済のバランスを保つ独自の戦略を構築すべきです。そのためには、同盟や国際協調の形を見直す必要があります。

著者 | 北野 幸伯 |
出版社 | 扶桑社 |
出版日 | 2020年12月20日 |
ジャンル | 政治・経済 |
日本は太平洋の西端、ユーラシア大陸の東に位置する島国であり、その地理的特性は国家の安全保障、経済活動、外交方針に大きな影響を与えます。海に囲まれているため、陸続きの国々とは違い、地上戦のリスクは比較的低いものの、逆に海上封鎖や航路遮断といったリスクに常に晒されています。
日本はエネルギーの9割以上、食料の6割以上を海外からの輸入に頼っており、そのほとんどが海上輸送によって届けられています。つまり、シーレーン(海上交通路)の安全を確保することが国民の生活に直結しているのです。特に近年、中国が南シナ海や東シナ海で軍事的影響力を拡大しつつある中で、日本の周辺海域は緊張の最前線となっています。
この状況下では、単に防衛力を強化するだけでなく、海洋法や国際ルールの枠組みを理解し、外交的に主張する姿勢も求められます。また、島国であるという特性は災害リスクにも関係し、津波や台風などの自然災害からも国を守るインフラ整備が戦略の一部となります。
さらに、海洋国家としての日本のポジションを明確にすることで、同じ価値観を持つ海洋国家(例:アメリカ、オーストラリア、イギリス)との連携強化にもつながります。加えて、排他的経済水域(EEZ)の活用や海底資源の開発など、島国ならではの経済戦略も視野に入れるべきです。
このように、日本の島国性は単なる地理的条件ではなく、安全保障、経済、外交の土台として深く結びついています。そのため、日本の未来を考える上で、地政学的視点からこの特性を正しく理解することは欠かせません。
地理的な制約を「弱点」と捉えるのではなく、「強み」として活かす知恵が求められているのです。教育やメディアを通じて国民がこの視点を共有することもまた、国の強さにつながります。
現代の国際社会では、アメリカと中国という2大国が軍事・経済・技術のあらゆる分野で覇権を争っています。そして、その狭間に位置する日本は、地政学的にも経済的にも非常にセンシティブな立場に置かれています。
日本の安全保障は依然として日米同盟に大きく依存しており、在日米軍の存在は抑止力として重要な役割を果たしています。一方で、日本の輸出入の大部分は中国を含むアジア地域と強く結びついており、経済面では中国との関係を無視することができません。つまり、日本にとってどちらか一方に過度に依存することは大きなリスクとなります。
これを避けるためには、多元的な外交戦略、すなわち「選択肢を多く持つ」ことが重要です。具体的には、インド太平洋戦略における「自由で開かれた海洋秩序」の推進、クアッド(日本・アメリカ・オーストラリア・インド)との連携、ASEAN諸国やEUとの経済連携協定などを活用することが挙げられます。
また、アフリカや中南米といった新興国との経済・技術協力も、対米中以外の選択肢を持つうえで有効です。外交の世界では「自立性」が強さにつながります。日本は価値観外交(民主主義・法の支配・人権)を軸としつつ、現実的な経済利害も踏まえたバランス感覚を養う必要があります。
これは単なる理想論ではなく、日常的な貿易交渉や国際会議の場面で具体的な成果を生むものです。バランスを取るとは中立でいることではなく、自国の利益を最大化しつつ衝突を避ける戦略的選択を繰り返すことを意味します。
国民にとっても、米中どちらが善悪という単純な構図にとらわれず、多面的に情報を捉える視点が求められます。教育現場や報道機関がその役割を担うことも重要でしょう。結果として、日本は「どちらかの陣営に属する国」から、「独自の選択ができる国」へと変化していくことが期待されます。
日本が取るべき現実的な戦略とは、理想に流されすぎず、国際情勢と自国の資源・立地・国力を正確に踏まえた実務的な選択を行うことです。
まず重要なのは経済安全保障です。半導体や医薬品といった重要物資のサプライチェーンを見直し、過度な海外依存から脱却する政策が求められます。その一環として、国内生産体制の整備や特定国への依存リスクの分散が進められています。
また、国家防衛については、専守防衛の原則を維持しつつも、敵基地攻撃能力など抑止力を意識した装備・運用の議論が進行中です。これは決して「戦争をしたい」わけではなく、「戦争をさせない力」を持つことが重要という認識に基づいています。
同時に、サイバー空間や宇宙といった新領域への対応も不可欠であり、技術革新と安全保障がますます密接に関係しています。
外交面では、国連改革や新たな国際秩序の構築に日本が積極的に関与する姿勢を示すことも、長期的には国家ブランドの向上につながります。そして内政では、人口減少や高齢化などの社会課題にも同時に向き合う必要があります。
戦略とは一面的な対策ではなく、複数の課題を並行して処理する「統合的判断能力」が問われるのです。教育政策も例外ではなく、地政学や安全保障のリテラシーを子どもたちに伝えることが、次世代の国づくりにつながります。
現実的戦略とは、理想主義や感情論ではなく、「現状認識に基づく具体的な行動」を意味します。政府の対応だけでなく、企業や市民一人ひとりの認識の変化もまた、この国の方向性を左右する大切な要素です。まさに国全体が一体となって「未来を設計する力」が問われているのです。
本書は地政学的な視点から日本の戦略を論じていますが、一般読者にとって具体的に何をすればよいかという「行動に落とし込める情報」は乏しいです。国家戦略や外交への興味がある人には一定の示唆を与えるものの、職場や日常生活で役立つ実践的内容ではありません。また、歴史的解釈に基づいた仮説の提示が多く、実務的提言とは言い難いです。
語り口は平易で、地政学の専門用語にも補足があり、丁寧に解説されています。ただし、比喩や例え話がやや多く、論点が散逸する箇所も散見されます。また、地政学の基礎に不慣れな読者には、前提知識が求められる部分もあります。全体の構造が見通しづらい箇所もあり、読者の集中力を試される構成です。
地政学を主軸とした国際政治・戦略の議論に特化しており、ビジネスや教育、家庭といった他の領域には応用しづらいです。汎用性という観点ではかなり限定的な読者を想定しており、広く活用できる知識体系とは言えません。国家間の力学への興味がある場合にのみ価値を持ちます。
話し言葉に近い口調で展開されており、読者との距離感は近い印象です。しかし、長文での説明や繰り返しが多く、冗長に感じられる部分もあります。読み進めるには一定の集中力が求められ、気軽に読める啓蒙書というよりは、やや骨太な内容となっています。
地政学、歴史、国際関係の知見に基づいて構成されており、一定の専門性は感じられます。ただし、著者の思想的立場が色濃く反映されており、学術的中立性はやや乏しい印象です。批判的検討や複数の視点を交えた構成になっていないため、「専門書」としての厳密さには欠けます。

どうだった?地政学って思ったより現実的で、日本にとってすごく大事な視点だって分かったでしょ?

うん、地図を見る目が変わったよ。日本がどれだけ周囲の国や海に影響されてるか、すごくよく分かった。

しかも、ただ地理的に不利ってわけじゃなくて、それを活かして戦略を立てることもできるってのが希望あるよね。

確かに。これからニュースを見るときも、背景にある地政学を意識してみるよ!
世界のパワーバランスが大きく揺れる中、日本は自らの地理的特徴と国際環境を正しく理解し、主体的に戦略を描く必要があります。本記事を通じて、日本の地政学的な立場とこれからの行動のヒントを得ていただけたなら幸いです。