【要約・書評】嫌われる勇気

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はじめに

Mam
Mam

ねぇTom…「すべての悩みは対人関係」って言われたら、ちょっとショックじゃない?私の悩み、もっと複雑な気がするのに…。

Tom
Tom

それ、俺も最初モヤモヤしたわ。自分の性格とか、育ちとか、もっと根が深い問題だと思ってたし。

Mam
Mam

でもこの本読んでみたら、「え、私ってそうだったの!?」みたいな気づきが多くてビックリした…。

Tom
Tom

『嫌われる勇気』でしょ?アドラー心理学ってさ、なんか厳しいこと言ってるのに、不思議と希望が湧いてくるのがいいんだよな。

「どうして人間関係はこんなに苦しいんだろう?」「なんでいつも自分ばかり劣っているように感じるんだろう?」

そんな疑問に、まっすぐに向き合ってくれるのが『嫌われる勇気』です。アドラー心理学の考え方は、決して優しい言葉ではないかもしれません。でも、「過去のせいにしない」「今ここから変われる」と断言するその思想は、誰の人生にも適用できる“勇気の哲学”です。

この書籍で分かること

分かること1:どうして「すべての悩みは対人関係」なのか?

悩みのほとんどは、他人の視線や評価、関係性から生まれます。自分ひとりの問題だと思っていたことも、実は対人関係が根っこにあるのです。

分かること2:トラウマや過去に支配されていないって本当なのか?

アドラー心理学は「過去」ではなく「目的」に目を向けます。どんな経験をしたかよりも、今どう生きたいかが人生を決定づけるのです。

分かること3:どうすれば“変われる”自分になれるのか?

性格や気質は“選び直せる”とアドラーは説きます。今の自分を変える鍵は、「変わらない」という決心を手放すことにあるのです。

参考書籍の概要

本書の3つの要点

要点1:悩みの正体は“対人関係”にある

私たちが抱える悩みの多くは、「他人がどう思うか」「誰かに認められたい」といった“対人関係”に根ざしています。アドラーは「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」と断言し、驚きと納得を与えました。一見、自分ひとりの問題に思える“劣等感”や“自信のなさ”も、その裏には「他人と比べてしまう自分」が存在しています

たとえば、仕事でのストレスや子育ての不安ですら、「他人にどう思われるか」「失敗したと思われたくない」という他者視線が引き金になっていることが多いのです。つまり、私たちは“他人”という存在に心を振り回されすぎているのです。

この視点を持つだけでも、人生の見え方がガラッと変わります。なぜなら、「悩みの正体は自分の中にある」と気づけるからです。他人が自分を苦しめているのではなく、「他人をどう見ているか」が自分を苦しめているのです。

さらにアドラーは「人は孤独では悩まない」とも語っています。孤独感でさえ、“他人とのつながりを失った”という対人文脈でしか成り立たない感情です。人間は本質的に“社会的な動物”であり、常に誰かとのつながりの中で生きているのです。

対人関係を見つめ直すことは、悩みの根本にアプローチすることと同じです。「どう生きるか」ではなく、「どう関わるか」を考えることで、自分自身の苦しさを軽くすることができるのです。そしてそのためには、まず“敵”に見えていた他者を“仲間”だと見なす視点の転換が求められます。

要点2:人は「過去」ではなく「目的」で動いていると知る

アドラー心理学の最大の特徴のひとつは、「原因論」ではなく「目的論」に立脚している点です。つまり、「過去の出来事が今の自分を決めている」のではなく、「今の自分が何かを得ようとして、その行動を選んでいる」と考えるのです。

これが驚きなのは、私たちがいかに「過去」に縛られて生きているかを自覚させられるからです。たとえば、「親に否定されて育ったから自己肯定感が低い」「いじめにあったから人間関係が怖い」といった思考は、すべて原因論に基づいています。

ですが、アドラーはそこに真っ向からNOを突きつけます。過去の出来事は事実であっても、それによって人生が決定されることはない。「自分がその経験にどう意味づけをしたか」が現在をつくるのだと彼は説きます。

つまり、人は「過去のせいでこうなった」のではなく、「こうするためにこの考え方を採用している」のであり、裏には“目的”があるというのです。たとえば「外に出たくない」という人は、「外が怖いから」ではなく、「外に出たくないという目的のために“不安”という感情を生み出している」と考えます。

この視点に立てば、トラウマでさえ“選び取った解釈”である可能性があるのです。もちろんすべてが自己責任だということではありません。大切なのは、「自分が意味づけを変えられる」という“選択の自由”があることを認めることです。

過去に縛られている限り、人は未来を変えられません。でも、「目的論」に立てば、今この瞬間から人生の舵を切ることができるのです。アドラー心理学は、「変えられない過去」ではなく、「選びなおせる今」に光を当てる哲学なのです。

要点3:「変われない」のではなく「変わらない」と決めている自分がいる

私たちは「変わりたい」と言いながら、どこかで「変わらないまま」の方がラクだと感じているものです。アドラーはこの人間の“心理的矛盾”を見抜き、「人は常に自ら『変わらない』という決心をしている」と断言します。

変わることは未知への挑戦です。たとえば、他人に心を開くというのは“傷つくかもしれない未来”に向かう勇気が必要です。だから人は、たとえ不満があっても「このままの自分」でいた方が安心なのです。

この「変わらない決心」は、気づかないうちに私たちの中で何度も繰り返されています。「性格だから変えられない」「もともと内向的だから」といった言葉の裏にも、実は“現状維持”を選んでいる自分がいます。

でも、アドラーは「ライフスタイル(性格や価値観)」さえも自分で選び直せると言います。たとえそれが無意識の選択であったとしても、知った今から変えることができる。これはまさに、自分自身への“信頼宣言”です。

そして変化の第一歩は、「変わる決心」ではなく「変わらない決心をやめる」ことです。勇気とは、完璧になることではなく、未完成のまま一歩を踏み出す意志のこと。変わりたいのに動けないとき、それは「失敗したくない」という保険にしがみついているのかもしれません。

だからこそ必要なのは、「今のライフスタイルをやめる」とはっきり自分に言うことです。そして「新しい関係性」「新しい自分」に向けて、失敗を恐れず踏み出すこと。アドラー心理学は、その背中を強く押してくれる“実用的な勇気論”なのです。

3つのアクションプラン

プラン1:対人関係の見方を変える

他人の視線が気になるときは、「相手は私をそれほど見ていない」と口に出してみましょう。意識して“他人の視点”ではなく“自分の視点”を選び取る習慣を持つことが大切です。日記などに「今日は誰とどう関われたか」「仲間と感じられた瞬間」を記録するのも効果的です。「この人は敵ではない、仲間だ」と一歩引いて見直すだけでも、関係は大きく変わっていきます。

プラン2:「目的」で動いている自分に気づく

困難な感情が湧いたとき、「私はこれで何を得ようとしているんだろう?」と自問してみましょう。ネガティブな感情の背後に“目的”があると気づくだけで、状況の見え方が変わります。思考の癖を記録する「目的メモ帳」をつくると、自分の行動パターンが見えてきます。目的論の視点を習慣化することで、反射的な落ち込みから距離をとれるようになります。

プラン3:「変わらない決心」を手放す

「どう変わるか」よりも、「このままでいたい理由」を書き出してみましょう。安心や言い訳として現状を選んでいないか、自分に問いかけることがポイントです。そして、「今日から〇〇を変えてみる」と宣言し、小さな一歩を行動に移してみてください。成功ではなく“行動したこと自体”を自分で褒めることが、変化の習慣をつくるコツです。

本書の評点

実用性
 (3)
分かりやすさ
 (4)
汎用性
 (3)
読みやすさ
 (4)
専門性
 (2)

実用性  

本書はアドラー心理学の基本的な考え方を、人生に悩む読者に対して示す点で一定の実用性があります。しかし、「勇気」や「選択」の重要性を強調する一方で、具体的な行動指針や日常の対処法は抽象的で、応用には読者の解釈力が必要です。また、職場や家庭といった現実的な文脈に落とし込むには、読者側の工夫が求められます。

分かりやすさ 

対話形式で進行するため、哲学的・心理学的な内容も比較的読みやすくなっています。難解な理論用語を多用せず、例え話や身近なシチュエーションを使って丁寧に説明されています。ただし、目的論やライフスタイルの概念など、読者の哲学的素養によって理解度が分かれる部分もあります。

汎用性 

自己啓発や教育、対人関係の改善といった広いテーマに対応する内容ですが、「トラウマの否定」や「承認欲求の否定」など、特定の立場に偏った議論が中心です。多様な読者の価値観に普遍的に受け入れられるかという点では、やや偏りがあり、場面によっては合わない場合もあります。

読みやすさ 

青年と哲人の対話がテンポよく進み、ストーリー性もあるため、哲学書としては非常に読みやすい部類に入ります。冗長な記述は少なく、感情的なやり取りを通じて読者を引き込む工夫があります。ただし、内容の反復がやや多く、読者によってはくどく感じるかもしれません。

専門性 

アドラー心理学を基にした内容ではあるものの、学術的厳密さはあまり重視されていません。引用や原典への注釈も少なく、あくまで著者の解釈を通じた「入門的再構成」に留まっています。心理学的知識の深掘りを求める読者には物足りない内容です。

まとめ

Mam
Mam

なんかさ、今回の本読んで、「私、変われないんじゃなくて、変わらないって決めてただけかも…」って気づいたんだよね。

Tom
Tom

うわ、それ俺も思った!変わるのって怖いけど、今の自分に不満があるなら、どっちみち動かなきゃだよな。

Mam
Mam

「人は変われる」って言葉、最初は胡散臭いって思ってたけど、アドラーの言い方だと妙に納得しちゃう。

Tom
Tom

てか“過去のせいじゃない”って超厳しいよね。でも逆に言えば、過去に関係なく“今から”変われるってことだもんな。

幸せになるために必要なのは、過去の分析でも誰かの承認でもありません。“今ここからどう生きるか”を、自分の意思で選び直す勇気なのです。

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