【要約・書評】シン・ロジカルシンキング

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はじめに

Mam
Mam

ねぇTom、最近会議とかで話してても、「あ、それロジカルだけど…で、何が新しいの?」って言われること増えてない?

Tom
Tom

あ〜わかるわかる。ちゃんと考えて整理してるはずなのに、「で、それって他とどう違うの?」って切られるやつな。

Mam
Mam

昔は「MECEです!」とか「ピラミッド構造です!」ってだけでドヤ顔できたのにねぇ(笑)

Tom
Tom

時代が変わったよな。最近、「シン・ロジカルシンキング」とかいう本が話題になってて、読んでみたんだけど、かなり衝撃だったよ。

「しっかり調べて、論理的に構成したはずなのに、クライアントからは『で、何が新しいの?』と一言。」「完璧なピラミッド構造で説明したのに、なんだか相手の心に刺さらない…」

そんな経験、あなたにもありませんか?従来のロジカルシンキングは、正しさや再現性には優れている一方で、「ありきたり」「誰でも思いつく」と片付けられてしまうことがあります。

いま求められているのは、“整っている”だけではなく、“面白くて意外性がある”思考。情報を並べるだけではなく、そこに自分らしい問いや仮説を持ち込み、差別化されたアウトプットを生み出す──

それを可能にするのが、今話題の「シン・ロジカルシンキング」なのです。

この書籍で分かること

分かること1:なぜ従来のロジカルシンキングでは通用しなくなったのか?

従来の思考法は再現性を高める反面、他者と同じ発想に陥るリスクがあります。結果としてアウトプットが「コモディティ化」し、差別化ができなくなってしまうのです。

分かること2:QADIサイクルとはどんな思考の型なのか?

問い→仮説→示唆→検証という流れで構成されるこの思考法は、発見と論証を両立するものです。論理的整合性だけでなく、“意外性”や“主観”も重視されます。

分かること3:生成AI時代に人間に求められる思考力とは?

同じAIを使っても、成果は人によって大きく差がつきます。その差は、「問いを立てる力」「仮説を広げる力」といった、人間ならではの思考の質にかかっています。

参考書籍の概要

本書の3つの要点

要点1:ロジカルに考えるだけでは差別化できない時代

これまでビジネスの現場で重宝されてきたロジカルシンキング。MECEやピラミッドストラクチャーといった「正確に、論理的に伝える」ための手法は、多くのビジネスパーソンの武器となってきました。特に再現性が求められるコンサルティングや経営企画の場では、ある種の“必須スキル”とすらされていたのです。

しかし、あまりにも多くの人がこの思考法を使うようになると、「誰がやっても同じようなアウトプットになる」という事態が生まれました。これが、著者が言うところの“思考のコモディティ化”です。つまり、論理的に正しいけれど新鮮味がない、そんな提案が量産されているのです。

クライアントや上司の反応が「またその話か」「知ってるよ」で終わってしまうのはそのせいです。論理的であればあるほど、人は“意外性”を求めるようになった。だからこそ、従来のロジカルシンキングだけでは、もう勝負ができないのです。

価値とは差異によって生まれる。差異を生み出すには、型にはまらない視点や、情報の切り口を工夫する力が求められます。そしてその切り口は、“主観”や“センス”といった個人の知的感性に根差すもの。標準化された思考を一度解体し、自分なりの視点を組み直すことこそが、これからの時代に通用する思考力なのです。

著者は「論理的整合性」よりも「論理的意外性」が必要だと語ります。これは、ただ奇をてらうのではなく、相手の予想を一歩越える“切り口の妙”を身につけよというメッセージです。つまり、論理は必要条件ではあっても、十分条件ではないということ。差を生み出す思考へと進化しなければ、生き残れない時代がすぐそこまで来ているのです。

要点2:新しい思考の型「QADIサイクル」でアイデアは進化する

QADIサイクルは、論理を超えて「考える力」そのものを再構築するための革新的な思考モデルです。Qは「Question(問い)」、Aは「Abduction(仮説)」、Dは「Deduction(示唆)」、Iは「Induction(検証)」の頭文字から成り、思考の全体像を構造的に捉えられるように設計されています。

従来のロジカルシンキングは「結論をどう正しく伝えるか」に注目していましたが、QADIはその前段階、「そもそも何を考えるべきか?」という“問いの設計”からスタートします。この段階でのズレがすべてを台無しにしてしまうことは、経験のある人なら誰しも痛感しているはず。良質な問いが立てられれば、思考の方向も明確になり、AIを含めた他者とのアウトプットにも明確な差が生まれます。

そして、Aの仮説形成では、初期段階のアイデアの“種”を生み出す力が問われます。これは決して一発のひらめきではなく、過去の蓄積や信念、価値観を土壌にして芽吹くものです。

次のDでは、その仮説がどんな意味を持ち、どう展開できるかを演繹的に掘り下げます。ストーリーとして語れるレベルまで昇華されれば、聞き手に届く“物語”になります。

そしてIで、それを検証するプロセスを通じて真の価値に磨き上げていく。ここでの検証とは、反証・再構築も含む、学びと進化のサイクルです。QADIは直線的なフレームワークではなく、循環構造を持つダイナミックな思考の「運動体」です。繰り返すことで思考は鍛えられ、型が「技」に変わっていく。

著者はこれを「OSのアップデート」と呼び、アプリ(=目的ドリブンの思考法)と連動させて活用することを勧めています。QADIサイクルを回すことで、自分の思考に筋力がつく感覚──それが“思考の型を持つ”ということなのです。

要点3:AI時代だからこそ問われる人間の“問い力”

AIが飛躍的に進化する中で、「人間にしかできないこと」は何かという問いが改めて問われています。その最たるものが、「問いを立てる力」です。AIは、あくまで入力された問いに対して答えることしかできません。つまり、何を問うかによって、得られる答えの質が決まるという構造があるのです。

著者はこの状況を「誰もが同じAIを使うなら、差は“問いの質”で決まる」と表現します。たとえば、ChatGPTに質問をする際も、ざっくりとした依頼と、背景や目的を明確にした具体的な問いでは、返ってくる答えの深さがまったく違います。それはまさに、問いが“思考の照準”であり、“情報のマグネット”であることを示しています。

さらに、人は問いを持つことで、情報を探し、仮説を立て、行動へとつなげていきます。問いがない状態では、どれだけ優れた情報が目の前にあっても活用できないのです。著者は、「問いを立てることは、知的自立の第一歩」だと語ります。

現代における知的成果の差は、ほとんどの場合、“問いの深さ”に起因しています。問いが深ければ、思考の深さも自然と追いついてくる。逆に、浅い問いからは浅い答えしか出てこない。それはAIでも人間でも同じです。

だからこそ、問いを磨くことが、思考力を鍛える最短ルートなのです。そしてその力は、ビジネスだけでなく、学び、対話、人生のあらゆる場面で“差”を生み出す源泉になります。これからの時代、「何を考えるか」は「何を問うか」から始まる。その視点を持てるかどうかが、人間とAIの“使われ方”を決めるのです。

3つのアクションプラン

プラン1:「意外性を仕込む」思考習慣を身につける

毎日の企画書や報告資料の中に、「あえて常識を逆転させてみる」問いをひとつ加えてみましょう。たとえば、「これは本当に“顧客のニーズに合わせる”必要があるのか?」と問い直してみるだけで、新たな視点が見つかることがあります。自分の発想が型にはまっていないかをチェックするには、他業界の成功事例をアナロジーとして取り入れるのも効果的です。また、定期的に「最近驚いたこと」をメモしておくと、自分の“意外性センサー”を鍛えることにもつながります。

プラン2:QADIサイクルを意識して考えを進める

アイデアを思いついたときに、「それはどんな問いに対する答えか?」と自分に問い返すクセをつけましょう。そして、そのアイデアを仮説として扱い、「もしそれが正しいとしたら、どんな結果が期待できる?」と演繹的に考えを広げていきます。さらに、それを検証するための具体的なデータや行動を計画することで、思考は“検討”から“実践”へとシフトします。この4つの流れを紙に書いて見える化すると、思考が整理され、他者にも伝えやすくなります。

プラン3:AIとの対話で“問い力”を鍛える

ChatGPTや他の生成AIを使う際、ただ「○○を教えて」と聞くのではなく、「背景にはこんな事情がある。こういう目的で、○○について知りたい」と文脈ごと提示するようにしましょう。何度か試行錯誤しながらプロンプトを磨いていくと、「どう聞けば、より良い答えが返ってくるか」が感覚的に掴めてきます。また、AIの回答をそのまま受け取るのではなく、「これはどの仮説に基づいて書かれているか?」と読み解く姿勢が、QADI的思考のトレーニングになります。生成AIは最高の“思考パートナー”になり得る存在──だからこそ、質問の質で自分の知性を磨く絶好の機会ととらえましょう。

本書の評点

実用性
 (4)
分かりやすさ
 (3)
汎用性
 (5)
読みやすさ
 (3)
専門性
 (4)

実用性 

本書は従来のロジカルシンキングの限界に警鐘を鳴らしつつ、新たな思考の型(QADIサイクル)を提示しています。現代的な課題(AIとの協働や差別化の必要性)に即している点は非常に実用的です。ただし、概念や理論の提示が多く、職場などの具体的な「使い方」の提示が後回しになっている印象もあり、その点で1点減点としました。

分かりやすさ 

冒頭から論点が豊富で、特に「方法の時代」「コモディティ思考」「論理的意外性」といったキーワードが連続して提示されるため、読む側に一定の抽象思考力が求められます。また、途中に冗長な記述や抽象的な比喩が散見され、読解負荷がやや高いと感じました。要点整理や図解による補助が強化されれば、より明快になったと思われます。

汎用性 

「考える力の鍛錬」というテーマは業種や職種を問わず普遍的であり、本書の内容もビジネス、教育、研究、日常生活など幅広い場面に応用可能です。特に「問いを立てる力」や「差別化されたアウトプットの重要性」などの論点は、多様な文脈で有効です。加えてAI時代における人間の価値の再定義という視座も汎用的です。

読みやすさ 

著者の語り口は熱量が高く、構成も明確な意図のもとに組み立てられていますが、一文が長くなりがちで、接続語や抽象語が多用されており、読者によってはやや読みにくさを感じるかもしれません。特に抽象度の高い哲学的な議論や編集工学的な視点の導入は、興味深い一方で読者を選びます。

専門性 

論理思考、戦略論、編集工学、AIと人間の協働など、幅広い専門知識をもとに構成されており、思考法に対する深い洞察が見られます。ただし、学術的厳密さよりも実務ベースでの洞察や経験に重きを置いているため、専門書としての厳格な論証構造を求める読者にとっては物足りない面もあるかもしれません。

まとめ

Mam
Mam

なるほどね〜。ロジカルであっても「面白くなきゃ伝わらない」って、深いね。

Tom
Tom

ね。俺も「問いが甘いと、出る答えも甘い」って反省したよ。

Mam
Mam

じゃあまずは、型を守って、でも時には“破ってみる”ってことだね。

Tom
Tom

そうそう。「意外性のない正しさ」じゃなくて、「驚きのある正しさ」を目指していこう。

思考を変えれば、結果も変わる。変化の激しい今だからこそ、“型”に頼るだけでなく、自分なりの思考を鍛える必要があります。「考えること」に真剣に向き合いたいあなたへ。QADIサイクルが、未来のあなたの思考を支えてくれるはずです。

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