【要約・書評】誰も教えてくれなかった実験ノートの書き方

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はじめに

Mam
Mam

ねぇTom、いま会社でちょっと調査系の仕事を頼まれてるんだけど、「研究ノートみたいなのもつけてね」って言われて、正直どうすればいいのか全然わかんなくて…。

Tom
Tom

ああ、それ理系出身としてはめっちゃ懐かしい響き(笑)。俺、大学時代に実験ノート毎日つけてたから、いまでも自然にメモとっちゃう癖あるよ。

Mam
Mam

そうなんだ…私、文系で論文は書いてたけど、ノートってただの思いつきメモ程度で、ちゃんとした“記録”とか全然やってこなかったんだよね。

Tom
Tom

文系だとそういう記録文化、あんまりないもんね。でも最近って、分野に関係なく「再現性」とか「経緯の透明性」ってすごく重視されるから、ノートの重要性が上がってるんだよ。

Mam
Mam

うわぁ、プレッシャー…。どうせならちゃんとやりたいけど、どう書けばいいのか見当もつかなくて。

Tom
Tom

でも大丈夫。実は「研究ノートに正解はない」ってのが本質で、大事なのは“考え方”と“目的”を押さえることなんだよね。

「何を書けばいいかわからない…」「記録って、ただのメモじゃダメなの?」

そんな悩みを抱える大学生に向けて、本記事では研究初心者でも迷わず書ける実験ノートの基本と考え方をわかりやすく紹介します。卒論はもちろん、就職や進学後の研究にも役立つ一生モノのスキルです。

この書籍で分かること

分かること1:なぜ実験ノートに「正解がない」と言われるのか

記録の形式や方法は自由度が高く、研究内容や目的に応じて変える必要があるからです。だからこそ、自分に合った書き方を見つけることが大切になります。

分かること2:実験ノートが「研究の信頼性」を支える理由とは?

ノートには思考のプロセスや根拠を記すことで、再現性と説得力が生まれます。記録は「自分のため」だけでなく「他者に伝える」役割も担っています。

分かること3:研究初心者でも続けやすいノートの工夫とは?

図や矢印、振り返りメモなど、自分にとって見やすく使いやすい形にカスタマイズするのがコツです。継続できる書き方が、研究を支える大きな力になります。

参考書籍の概要

本書の3つの要点

要点1:実験ノートに「正解」はないが、「考え方」はある

研究ノートには絶対的な正解があるわけではありません。なぜなら、研究の内容や進め方は人それぞれで、記録の方法も柔軟であるべきだからです。本書では「記録の正しさ」よりも「記録する意義」や「考え方」が重視されています。

たとえば、実験がうまくいかなかったとき、その原因を探るヒントになるのが記録です。さらに、過去のデータを元に仮説を立て直したり、別の人に研究内容を伝えるときにもノートの質が問われます。記録がない、あるいは曖昧なノートは、研究の信頼性を損なうリスクにもつながります。

一方で、誰かに見せることを前提としたノートを書くことで、自然と自分の思考も整理されていきます。つまり、「なぜ書くのか」を理解することで、記録の目的が明確になり、ノートの中身もぐっと良くなるのです。

本書のこの視点は、今まで「とりあえず書いていた」私の記録習慣を大きく変えてくれました。記録とは、自分の思考の“鏡”であり、未来の自分や他者への“贈り物”でもあるのだと感じました。

要点2:記録の目的は「見返す・伝える・証明する」

実験ノートは、自分の研究の“証拠”であり、“対話ツール”でもあります。なぜなら、研究というのは「誰かに再現されるかどうか」が大前提だからです。著者は「見返す・伝える・証明する」という3つの観点で記録の重要性を説いています。

たとえば、失敗した実験の原因を見返したり、進捗を他人に説明したりする場面では、ノートが頼れる存在になります。さらに、研究の信頼性を担保する上でも、正確な記録は必須です。ノートに記録されていないデータは「なかったこと」とされることすらある、という話は衝撃的でした。

そう考えると、たとえ小さな気づきや思いつきであっても、しっかりメモしておくことが研究者としての責任なんだと気づかされます。本書では、記録の“粒度”や“余白”にも触れており、過不足ない記録のイメージがつかめました。

記録が「後で自分を助ける資産」になることを意識すると、ノートに向かう姿勢も変わります。この章を読んだあとは、何気ないメモにも意味があると思えて、ノートを書く時間が楽しみになりました。

要点3:「自分に合った書き方」を試行錯誤しながら見つける

研究ノートは「こう書くべき」という型にとらわれすぎなくてよいのです。その理由は、研究のスタイルも、記録する目的も人によって異なるからです。本書では「自分なりの書きやすさ」を見つけることが、継続のコツだと紹介されていました。

たとえば、図や矢印を使ったり、色分けしたりと、ビジュアル的な工夫を取り入れることで、記録がグッと見やすくなります。また、毎日の実験記録だけでなく、週単位・月単位での「振り返りメモ」も有効だといいます。私自身、1ページにまとめる週報的なノートを取り入れてから、頭の中が整理されやすくなりました。

他人の書き方を参考にすることも大切ですが、最終的には「自分が使いやすいかどうか」が一番の判断基準です。特に卒論のような長期研究では、「記録のしやすさ=継続力」に直結するという実感があります。

“ノートは自分との会話”という表現が印象的で、書くことが作業ではなく、研究の一部に思えてきました。本書を読んでからは、ノートを書くことに対する心理的なハードルが下がり、自然と手が動くようになりました。

3つのアクションプラン

プラン1:自分の言葉で「なぜ書くのか」を定義してみる

ノートを書く前に、記録の目的を自分なりに言葉にしてみましょう。たとえば、「失敗の原因を見つけるため」「あとで見返すため」など、具体的にすることで記録の質が変わります。目的が明確になれば、「何を書くべきか」が自然と見えてきます。

プラン2:「見返す・伝える・証明する」の3視点で記録をとる

記録する内容に迷ったときは、「自分があとで読み返すとしたら?」「他人に説明するなら?」「証明として使えるか?」という3つの視点を当てはめてみましょう。必要な情報の抜けや曖昧さに気づきやすくなり、記録の精度が格段に上がります。

プラン3:自分にとって使いやすいノート形式を試してみる

一律のフォーマットにこだわらず、箇条書き・矢印・図解など、自分が後から見やすい形式を自由に取り入れましょう。毎日の記録+週単位の振り返りメモのように、リズムをつけるのもおすすめです。続けやすさを大切に、自分なりの「記録スタイル」を育てていきましょう。

本書の評点

実用性
 (5)
分かりやすさ
 (4)
汎用性
 (3)
読みやすさ
 (4)
内容の専門性
 (3)

実用性 

実験ノートの使い方を丁寧に解説しており、すぐに実践できる具体的な手法が多く紹介されています。研究の現場で直面しがちな課題やミスへの対応も具体例とともに説明されており、非常に実用的です。特に卒業研究を控える学生にとっては、即戦力となる内容が網羅されています。

分かりやすさ 

語りかけるようなやさしい文章で、読者のつまずきやすい点に配慮されています。ただし、情報量が多いため章ごとの構造がやや複雑で、読み返さないと把握しにくい箇所もあります。初学者には少し詰め込みすぎと感じられる部分があるかもしれません。

汎用性 

大学の理系学部で卒業研究を行う学生を主対象としており、対象読者がかなり限定されています。内容の多くは化学・生命科学系の実験に最適化されており、社会科学や文系の研究者には応用しにくいです。一方で「記録の重要性」や「誠実な態度」の話は分野を問わず参考になります。

読みやすさ 

語り口が柔らかく、読者の立場に立った説明が多く取り入れられています。ただし、繰り返しや冗長な表現がやや多く、テンポよく読み進めるには根気が必要です。要点をまとめる章末の工夫があれば、より読みやすくなったと感じます。

専門性 

実験ノートの基礎から応用まで幅広く扱っていますが、専門的な技術や高度な理論にはあまり踏み込んでいません。特許出願や学術論文投稿を見据えた話もありますが、深掘りはされていませんでした。専門書というよりは「実験ノートの入門書・心得帳」として位置づけられる内容です。

まとめ

Mam
Mam

なるほどね…研究ノートって、“正しく書く”ってより“ちゃんと考えて書く”って感じなんだね。

Tom
Tom

そうそう。「記録」って聞くと面倒に感じるけど、実は一番ラクなのは“後から困らないように今ちゃんと書いとく”ってことなんだよね。

Mam
Mam

たしかに…あとで自分で見て「何これ?」ってなるの、あるあるすぎる(笑)

Tom
Tom

俺も何度かそれで泣いた…。だから、未来の自分に説明するつもりで書くと、自然と丁寧になるんだよ。

Mam
Mam

それ、社会人でもすごく大事な視点かも。今やってること、誰かに引き継ぐこともあるし。

Tom
Tom

ほんとそれ。理系でも文系でも、研究でも仕事でも、“記録”ってコミュニケーションなんだよね。

実験ノートに正解はありません。大切なのは、「なぜ書くのか」「誰のために書くのか」を意識すること。その視点を持てば、記録はあなたの研究と人生を支える一番の味方になります。

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